実在する珍しい名字 (2)

伝説系

名字の由来として伝説が伝わっているものです。
どうしてこういう名字になったのか、という伝説が家に代々伝わっているわけですから、由緒のある家柄であることは間違いありません。

肥満 ひまん

かつて、ある村で村人が旅のお坊さんを家に泊めました。すると、お坊さんはお礼として石をくれたそうです。この石、なぜかどんどん肥え太るように大きくなっていったのですが、それと同時に村も栄えるようになったとか。
あとで聞くと、実はその旅のお坊さんとは有名な弘法大師だったので、村人は、この石にあやかって名字を「肥満」にしたという言い伝えが残っています。
全国各地に伝わる“弘法大師伝説”の一つなのですが、「石が大きくなる」→「肥満」という飛躍がなんともすごいところです。その背景には、中世以前では「太っている=裕福」という概念が一般的にあったのだと思います。

薬袋 みない

この名字には伝説がいくつかあって、どれが正しい伝説なのかよくわかりません。基本的に武田信玄の支配下にあった村のことで、薬の袋が関係している(当たり前だが)というのは一致しています。
最も一般的なのは、武田信玄は薬の袋を落とした時、これを届けでた村人に、信玄が「中を見たか」と聞くと「見ない」と答えた、というものです。ここから、「薬袋」で「みない」と読むようになったとか。
別の伝説では、長寿村のため、誰も薬すら飲まず、「薬袋をみない」から名字になったといいます。実際、山梨県には有名な長寿村もあり、もっともらしい説です。
この発展型の名字として「御薬袋/みない」というのもあります。こちらは漢字で、「武田信玄の薬袋だ」と主張しているようです。

舌 ぜつ

京都の貴船神社に「舌」といえ名字の神官があります。
かつて貴船神社に神様が降臨した際、牛鬼というおしゃべりな神が、他言無用の天上の秘密をしゃべってしまい、舌を八つ裂きにされて追放されたといいます。牛鬼は、その後貴船に戻り、自ら戒める意味で「舌」を名字として、貴船神社の神官になったと伝えています。

玉虫 たまむし

この名字に伝わる伝説はすごいです。越後国で戦に敗れた武士が自刃しようとしたとき、一人の老人が現れて命を助けられたそうです。その後、その老人が玉虫に変化して去って行ったことから、以後玉虫を名字にした、と伝えられています。
この老人はいったい何者だったのでしょうか。