地域別の分布(西日本)

関 西
 関西も南関東同様、西日本の中心地のため名字の構成は西日本全体の縮図で、あまり特徴はありません。山本・田中・中村・松本が全域に広く分布し、関西の特徴的な名字としては、関西全体の上田、北部の西村、南部の岡本があげられます。ベストテンの名字を並べると、関東と比べて使われている漢字の画数が少ないことがわかります。
 この地域をルーツとする代表的な名字は「鈴木」です。この名字は、刈り取ったあとの稲藁をつみあげたものを紀伊半島で「すずき」と呼ぶことに由来するもので、和歌山県の海南市には今でも鈴木総本家の屋敷跡が残っています。

中 国
 中国地方も典型的な関西系の名字構成です。山本・田中の関西2大姓に加えて、山陰の安達・足立、中国山地一帯の山根、山陽の藤井、西部の藤原と佐々木などが絡んで上位に並んでいます。山口では中村、原田など九州との結び付きも見受けられます。また岡山は古くから栄えていたため独特の名字も多く、妹尾、難波、三宅などが上位に入っています。

四 国
 四国も「山本」「田中」の多い関西系ですが、独自の名字もたくさんあります。また、「山本」「田中」以外は4県の構成は全くばらばらで、4県の上位を見ても共通のものが少ないのが特徴です。
 しいて「四国の名字」をあげれば、徳島県発祥で香川県で最多の「大西」でしょうか。都道府県単位の最多が「大西」というのは、宮崎県の「黒木」と並んでかなり異色といえます。
 この他では、四国北部の「真鍋」、東部の「多田」、南部の「田村」、西南部の「上田」、東予の「村上」「越智」などが特徴です。この他では、徳島県の「板東」「坂東」、香川県の「香川」「宮武」「六車」、愛媛県の「兵頭」「菅(かん)」「清家」、高知県の「岡林」「中平」「公文」など、独特の名字も多数あります。

北九州
 九州地区は関西とはまた違った分布となっています。古代から栄えた地域だけに名字の種類も多く、他地域では見られない独特の名字も多くあります。北九州では関西系の山本・田中と、九州全体に共通の中村、それに北九州の名字である古賀・松尾・山口が多く、原田が多いのも特徴です。特に、福岡県南部から佐賀県あたりにかけては、古賀姓が非常に多いことでも知られています。
 また、通常離島ではその島独特の名字が多いものですが、壱岐や五島では古代からの人の往来が頻繁だったせいか、本土とさほどかかわりません。

大 分
 大分は九州の中では全く独自の名字構成となっています。佐藤が最多なのをはじめ、後藤・江藤・衛藤・工藤・首藤・安藤など、「藤」のつく名字が上位に多数入っており、典型的な東日本型です。平安末期、この地方には緒方一族が栄えていました。しかし鎌倉初期に滅び、そのあと、新しい支配者として関東地方から鎌倉御家人が大挙して入国、そのまま土着したのです。彼らの子孫は大いに繁栄したため、本来の九州の名字が駆逐されて、関東型の構成となってしまいました。上位の名字では甲斐が特徴的です。

南九州
 南九州は独特の名字が多い地域です。田中はこの地方でも多いのですが、山本はすっかり影をひそめ、九州全体に多い中村と、南九州に共通の山下・日高などが上位に入っています。宮崎で最多の黒木は他地方では見られない名字ですし、坂元、山元などの「元」のつく姓や、「山之内」「池之上」など「之」のつく名字が多いのも特徴です。鹿児島では漢字4文字の名字も普通にみられます。
 また、都城など、宮崎県の南部は島津氏の支配下にあったため、名字の構成も鹿児島と同じようなものになっています。宮崎県知事の「東国原」という名字も本来は鹿児島県の名字です。

沖 縄
 沖縄は全く独自の名字で満ちています。最多の比嘉以下、本土には無い名字が上位に並びます。これらは殆どが沖縄の地名をルーツとしており、一部に鹿児島から移ってきた名字があります。江戸時代、琉球を支配した薩摩藩は、琉球の人に対して名字を独特のものにすることを要請したといわれています。そのため、「なか=名嘉」「ふく=譜久」など、独特な漢字使いをするものが多くなっています。
 また、沖縄では分家する際、本家の名字の上に「東」「西」「前」「後」といった位置関係をつけて新しい名字としたことから、名字はさらに独自のものとなりました。
 この他、「東」を「あがり」、「西」を「いり」と読むなど、読み方自体も独特のため、沖縄以外ではなかなか正しく読んでもらえません。そのため、戦後難読の名字を本土風に改姓したものも多いようです。