実在する珍しい名字 (1)

トンチ系

名字には、一休さんのトンチ問題のようなものがいくつかあります。これらはおそらく、元々あった名字にあとから違う漢字をあてることになり、当時の人が考え出したものでしょう。

小鳥遊 たかなし

珍しい名字という企画があると、必ずのように取り上げられるのが「小鳥」が「遊ぶ」と書くこの名字です。
小鳥は弱いため、敵を気にしてゆっくりと遊ぶことができません。しかし鷹のような強い鳥がいなければ、安心して遊ぶことができるだろう、ということで、この名字は「たかなし」と読むのです。
トンチ系の名字としては分かりやすいことから方々で紹介されるので、みたことある人も多いのではないでしようか。
もともとは「高梨」さんだった方の一族が漢字を変えたものだと思います。

九 いちじく

「九」一字で「く」と読むことから、これだけで「いちじく」と読みます。一桁数字の名字には、「一」「三」「六」「九」の4通りが実在しますが、その中でももっともユニークな読み方です。由来などはわかりません。

部田 とりた

この名字は知らない限り絶対に読めません。というより、「ぶた」と読む以外、想像すらつきません。初対面で相手に呼びかける必要があったらどうしますか?。相手が女性だったら、口が裂けてもいえませんよね。
この名字の秘密を解く鍵は「服部」さんにあります。「服部」も充分難読なのですが、これは誰でも「はっとり」と読めます。「服部=はっとり」ならば、「部=とり」だろう、と考えた人がいるのです。ですから、「部田」で「とりた」ということになります。
この系統には、「日下=くさか」から生まれた「日馬=くさま」などがあります。

臥龍岡 ながおか

「龍」が「臥」せている「岡」。龍とはいうまでもなく、中国の想像上の動物。この龍が地面に寝ていたらどんな感じでしょうか。おそらく、長~く地面が丘のように盛り上がっているように見えるに違いないです。ですから、「臥龍岡」と書いて「ながおか」と読みます。
本来の名字は「長岡」さんだったんでしょうね。

月見里 やまなし

月を見るには山がない方がよく見えます。だから、「月見里」と書いて「やまなし」と読みます。静岡市の旧清水地区と、千葉県の松戸市付近の名字で、清水には「月見里神社/やまなしじんじゃ」という神社もあります。
なお、漢字通りに「つきみさと」と読むこともあります。
こちらも元々は「山梨」さんだったのではないでしょうか。

鶏冠井 かえで

ニワトリの冠といえば「トサカ」のことです。このトサカ、何かに似ていると思いませんか。真っ赤なトサカは、紅葉したカエデの形に似ています。そこで、「鶏冠」と書いて「カエデ」と読ませます。
京都府には「鶏冠井」という地名があり、室町時代にはここをルーツとする国人(在地武士)の鶏冠井一族がいたことが知られています。本来は「かえでい」だったと思うのですが、いつの間にか末尾の「い」がなくなり、今では「かえで」と読んでいます。

十 もぎき

一見、漢数字の「十」に見えますが、本当は漢数字の「十」ではありません。実は、「木」という漢字の両側の払いがなくなっているものです(ここでは漢数字の「十」で代用しています)。
読み方には「もげき」とも「もぎき」とも言われていましたが、「もぎき」が正しいようです。その理由は、「木の払いをもいだ形だから」ということに由来します。漢数字の「十」は縦棒は先を止めますが、「木」という漢字は行書では縦棒の先をはねます。ですから、「もぎき」さんも正しくは縦棒の先をはねるのだそうです。